アンパンマンふりかけが売られていた。立体のプラスチック人形の顔がとれるようになっていて、胴体にふりかけを入れる。顔をとって、ふりかけをサッサッとふりかけられる仕組み。頭がとれて交換できるのもキャラクターに合っていて、いい商品だと思った。
そのなかでバイキンマンだけ値下げされていた。さすがに、ごはんの上にバイキンをふりかけるのは抵抗があって売れないようだ。おれはバイキンマン好きなので買ってきた。
海外の人に「アンパンマン」を説明するの難しい。言葉にすると自分でも不可解なところがある。
アンパンマンは日本の乳幼児向けの大人気アニメ。小豆を甘く炊いたもの、和菓子やおまんじゅうに入っているのが餡。それをパンに入れたのがアンパン。
日本中のパン屋さんにも置いてあるアンパンのキャラクターだから親近感があるし、パン屋さんのほうもアンパンマンの形のパンを売ったりする。アンパンマンの作者は寛容で咎めない。ディズニーのような海外のスターの顔とはちがって、パン屋や小児科の壁に手描きでかかれているアンパンマンは近所の顔だ。
と、こんなところはフンフンと聞いてもらえるのだが、肝心のヒーローそのものについて「アンパンマンは、困っている人がいると自分の顔をちぎって食べさせる」「顔を食べられすぎたり、水に濡れるとパワーがなくなるので、頭を交換してシャキッとする」と説明すると、相手の顔が曇る。自分も説明していてホラー映画の設定を話している気持ちになる。
言語化すると不可解なところをはらんだまま日本人の生活に浸透しているアンパンマンは凄い。朝、通勤通学して帰宅するまでに一度もその絵やグッズ商品を見ない日はない。スーパーマーケットやドラッグストアで、アンパンマンやバイキンマンの形をした商品がある。造形がシンプルだから、キャラクターの形をした容器やパッケージも作りやすいのだろう。乳幼児向けだから安全性の要求も高いだろうに、しっかり似ていてキャラクターグッズとして質が高い。おれは大人だけど思わずまじまじと見てしまう。
バイキンマンは感謝されない。しかしバイキンマンがいなければ、あの世界は成立しないし誰も注目しない。バイキンマンがいなくなって、パンと動物と人間だけの暮らしになったらつまらない。パンと動物と人間は、バイキンマンに抵抗する為に団結しているが、バイキンマンがいなくなったらお互いの異質さが問題を起こすかもしれない。よく言われるように、菌がなければパンもできないし。
あの世界における重要な役割を、バイキンマンは私利私欲の自分の為のつもりでやっているのも素敵だ。アンパンマンみたいに「みんなのため」なんて胸を張って言わない。アンパンマンも、自分の存在意義や自尊心がバイキンマンによって与えられていることを認識すべきだ。バイキンマンみたいな爺さんになりたい。